チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)とは


①子どもへの説明 / 心の準備とリハーサル(プリパレイション)

子どもは本来、好奇心・探究心旺盛な主体的で力のある存在です。医療体験に対して、何も知らされないこと、何もわからないことの方が子どもにとっては逆に不安であり、余計な恐怖心を募らせてしまいます。そのため、医師や看護師と連携・協働しながら、検査や処置、手術の前に、子どもの年齢や発達段階、理解度、個別性に応じた方法で、子どもにわかりやすい説明を行います。

ピクチャーブックや人形、医療資材を用いながら、子どもが実際に見聞きすること、体験することに関する子ども向けのお話をしながら、子ども自身の心の準備と医療体験へのリハーサルを行います。子どもなりに理解・納得し、きちんと知ることで、子どもが抱える不安や恐怖を軽減させ、子ども自身が医療体験に対して主体的に取り組めることができるようサポートします。

 

②治癒的遊び(セラピューティックプレイ):

☆メディカル・プレイ

人形やおもちゃ、実際の医療資材などを使用しながら遊ぶ医療遊びの1つです。安全な方法で実際に医療資材を使って遊ぶことで、子どもが目にする医療資材に慣れさせ、医療体験に対する理解を促します。子ども主体の遊びのため、CLSは、その子どもの体験に対する認識や理解度、誤解の有無などを遊びながら把握し、子どもからの質問に答えたり、誤解を訂正したりする機会にもなります。また、CLS主体のメディカル・プレイも行い、医療処置や病気、身体に関する教育的な遊びも行います。

☆感情表出遊び

子どもたちは、見慣れない限られた医療環境に入り、家族と離れた入院闘病生活を送る中、苦痛を伴う手術や処置などの医療体験や自分自身の治療と向き合いながら、不安や葛藤など様々な思いや感情を抱いています。その子どもの個別性や状況に合った、適切且つ安全な方法で感情を表出・発散させ、ストレスを和らげるサポートを行います。自分が経験したことを人形で実際に行ってみたり、お絵描きや遊びの中で表現したり、CLSと一緒にその体験のお話をしながら遊びます。子どもの体験に対する理解や認識、受け止めを確認したり、苦痛体験に対するストレス・コーピングを促すことを目的としており、必要と思われるお子さまへ行います。

 

③検査・処置中の精神的サポート

痛みや苦痛を伴う処置や検査に、CLSが一緒に付添いながら支援することによって、子どもに安心感を与えます。スタッフ間の打ち合わせや処置・検査の準備中に、子どもに関われる人・CLSがすぐ側にいることで、子どもが孤独にならず、余計な不安や緊張を和らげます。処置・検査中は、子どもの心の中が怖さでいっぱいにならないように話しかけたり、おもちゃや絵本などのディストラクション技法を用いたりしながら、子どもの気持ちを和らげ、落ち着けるようなお手伝いをします。必要な子どもには、手術室の中にも一緒に入室して麻酔導入まで付添います。

 

④子どもに優しい医療環境作り

病院の中に一歩入ると、病院特有の医療環境に囲まれます。子どもにとっては、自分の家や家族と離れての入院生活は非日常です。その非日常をできる限り日常に近づけ、子どもにとって安全で、優しく温かい医療環境作りに努めます。また、プレイルームやデイルームなど子どもたちが集い遊んでいる場では、痛みや苦痛を伴うような医療行為は行わないようにと医療スタッフに働きかけています。痛いことをする場所と子どもたちにとっての安全な場所とを区別しています。また、医療環境下においても季節感を大切にしながら、病院にいる子ども達の楽しみの時間や季節行事を提供することを心掛けています。

 

⑤遊びを通じた発達支援と医療環境への適応支援

子どもたちは日々成長発達する存在であり、医療環境においても、できる限りその子なりのペースで成長発達が妨げられないように支援され、子どもの権利は守られなければなりません。入院生活が始まるその日から、子どもたちが医療環境に早く慣れて適応し、同室の子どもたちと一緒に遊んだり、お友達になれるようにサポートします。そして、医療環境内においても、子どもたちの日常性を大切にしながら、日々の子どもたちの状況に応じて、ベッドサイドでの個別遊びや、デイルームやプレイルームでの集団遊び、アクティビティーの提供を行います。また、子どもとの日々の関わりや、遊びとコミュニケーションを通じた情報収集とアセスメントを行い、個々の子どもに必要な介入支援や発達支援なども行います。保育士やボランティアの方々と協力して季節行事の会を開催しています。その他にも、他団体や企業のご協力のもと、子ども達の楽しみや学びの時間として、科学実験教室やアートワークショップなどの催しを開催しています。

 

⑥診断や説明(手術・検査・治療など)に伴う心理社会的支援

子どもとご家族が病気と向き合い、病気や病状などを理解・把握した上で闘病できるように、多職種で連携してサポートを行います。医師からのご家族や子どもへの説明に同席したり、ご家族への心理社会的支援を行います。また、子どもの年齢や認知発達・理解度に応じた子ども向けの補足説明を行い、子ども自身がどのように話を理解したのかを確認し、誤解や疑問が残らないようサポートします。 

子どもへの病名・病状告知における支援や告知前後の継続的なサポートも行います。

ご家族や子どもが必要とする場合は、医師に連絡・相談し、再度、医療者からの説明やお話ができるように調整します。

 

⑦ご家族にとっての様々な危機的状況への介入とグリーフケア

急な入院となった場合や、わが子の診断・病名告知などの場面では、ご家族は身体的にも精神的にも危機的な状況に置かれます。そんなご家族の側に寄り添いながら、危機状況を家族で乗り越え、上手くその状況を理解して対処していけるようにサポートします。

また、様々な喪失体験に対する兄弟姉妹を含めたご家族への支援やグリーフケアを多職種と連携して行います。

 

⑧多職種連携と“架け橋”の役割

直接医療行為を行わないCLSという医療チームの一員がいることによって、子どもやご家族が相談しやすい環境や関係性を提供し、子ども・家族・医療者との“架け橋”の役割を担います。そして、医療チームの一員として、多職種と連携しながらより良い小児医療の提供に努めます。

 

⑨その他

親ががんを患うお子さんへの病気・病状の説明や心理社会的支援の提供を目的に配属されている病院もあります。NICUでは、赤ちゃんのきょうだいに対するNICU面会準備やきょうだいの関係作り、母子・父子間の関係作りサポートなどの役割も担います。